D3の根本君の論文がFront. Plant Sci.に受理されました。おめでとう!
窒素(N)欠乏は、植物において大規模な転写リプログラミングを引き起こします。葉緑体で機能するシグナル分子「グアノシン四リン酸(ppGpp)」は、RelA-SpoTホモログ(RSH)と呼ばれる酵素によって合成・分解され、葉緑体における代謝を包括的に制御します。本研究では、シロイヌナズナのすべてのRSHを欠損させ、検出可能なppGppを全く蓄積しないシロイヌナズナ変異体(quadruple)を作出し、解析しました。トランスクリプトーム解析の結果、+N条件および−N条件において、それぞれ774個および2,928個の核コード遺伝子が、野生型(WT)と比較してその発現が変動していました。さらに、+N条件から−N条件への移行に伴い、WTでは2,487個、変異体では1,505個の核遺伝子の発現が変動しており、それらは主として細胞壁生合成および防御応答に関連していました。この結果は、葉緑体由来のppGppが、窒素量に応答した核遺伝子発現のリプログラミングに関与することを示唆しています。転写因子のネットワーク解析により、ppGppが転写因子群の発現を変化させることが示され、さらに窒素飢餓時にppGpp依存的に転写因子の発現を制御する11個のマスターレギュレーター候補を同定しました。また、−N条件下では、複数の葉緑体コード遺伝子の転写産物量がWTと比較して変異体で増加していた一方で、ミトコンドリア遺伝子転写産物への影響は比較的小さいことを明らかにしました。以上の結果から、ppGppは窒素利用可能性に応答して、核遺伝子の転写と葉緑体における代謝適応を協調的に制御するレトログレードシグナル伝達の重要な構成因子かつ制御因子として機能することが示唆されました。